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第4話 年額十億円、二年間の契約結婚、やるか?

Author: 夕凪
last update publish date: 2026-06-03 18:25:54

第4話 年額十億円、二年間の契約結婚、やるか?

美月はその内容を見て、フンと鼻を鳴らした。

それから自分もSNSに投稿した。

『クズ男、さようなら』

桐生夫人はそれを目ざとく見つけてしまった。彼女は逆上し、貴婦人の冷静さを完全に失った。

声は抑えようもなく何段階も跳ね上がった。

「橘さん、今なんて投稿したの!? 今すぐ削除しなさい!」

美月は異様なほど落ち着き払った目で彼女を見つめた。

「二つのうち一つを削除。お好きなほうをどうぞ」

桐生夫人は即座にその意味を理解した。

彼女は血圧が急上昇して、倒れそうなほどだった。

「橘さん、いい加減にしない? そんなに瑛士を潰したいの? 何年もあんたを宝物みたいに可愛がってきたのに。あんたのせいで、あの子が何度家ともめたか、わかってるんでしょう? もう別れるっていうのに、ここまで容赦なくやるなんて。あんたの心は石でできてるの?」

「私はクズ男に隠れ蓑をかけてやる趣味はありませんので」

そう言い捨てると、美月はくるりと背を向けて立ち去った。

桐生夫人は心臓も肝臓も脾臓も肺も、すべてが痛むほど怒り狂った。

その背中に向かって、彼女は捨て台詞を吐いた。

「橘さん、桐生家を敵に回すとどうなるか、よーく考えたほうがいいわよ」

美月の足がわずかに止まったが、振り返ることなくそのまま歩き去った。

桐生家を出ると、車がまだそこに停まっているのに気づいた。

蓮の片手が窓の外に置かれ、二本の指の間にはまだ消えていない煙草が挟まれていた。

気怠げでくつろいだ表情は、出てきた人を見つけると、目を細め、それから顎をくいと上げた。

「乗れ」

今度は美月も遠慮しなかった。そのまま乗り込んだ。

蓮は煙草をもみ消した。

アクセルを踏み込むと、車は再び弾かれたように飛び出した。

「……」美月は言葉を失った。

なんでまた乗ってしまったのか。

どこで降りようかと考えあぐねていると、スマホが突然、鳴り出した。

画面の着信表示を見て、美月は口をきゅっと結び、そのまま切った。今は誰の電話も取りたくなかった。たとえ橘家からでも。

なぜなら、いわゆる家族たちが何を言うか、わかりきっているからだ。

その時、車が急に停まった。

あまりに唐突で、美月は身構える間もなかった。

彼女はわずかに首を傾けてその方向を見た。

二人の視線がかち合った。

「綺麗に別れたのか?」

「……?」美月は言葉を失った。

「年額十億円。二年間の契約結婚……やるか?」

「……」美月は言葉を詰まった。

十億円……年額? しかも契約結婚?

そんな美味い話があるものか?

彼女は虚心に尋ねた。

「……それで、私の義務は?」

蓮の指が、ハンドルの上を軽く叩いた。

「俺の家に引っ越して同居。家族の前では親密に振る舞うこと」

魔力を帯びた顔には高慢さがみなぎり、さらに一切を見下すオーラがあった。

「……ただし、俺に惚れるなよ」

「……」美月は言葉を失った。

よくもまあそんなに自信満々でいられるものだ。

蓮は彼女を横目で見て、簡潔に言い放った。

「オーケーなら、明日にでも入籍しよう」

「……」

「記憶違いでなければ、瑛士ってあんたのダチだったわよね?」

別れた直後にこんな話を持ち出すなんて、どう見てもおかしい。

蓮は気にも留めなかった。

「別れたんだろ? 安心しろ、俺のモラルはちゃんとしてる」

「……」美月は言葉を失った

ご親切にどうも。まったくそうは見えませんが。

美月は真顔で言った。

「一つお尋ねしたいことが」

蓮は片眉を上げた。

「言え」

「どうしてあなた、あのタイミングで外に?」

それに親切にも桐生家まで送ってくれるなんて?

そう考えているうちに、美月の彼を見る目つきがおかしなものに変わった。

「ノクターンに行く前に、俺のところにメッセージが一件届いてな」

蓮は口元を緩めて、軽く笑った。

「まさか俺がわざわざ密告したなんて思ってないよな?」

「……」

違うのか?

彼女はこの世に偶然の一致など信じたことがなかった。

「まあ、まさに俺が暇つぶしに密告したんだ。気分が良かったから、いいことをしてやったまでだ。礼はいいぞ」

この急すぎる展開に、美月は言葉を失った。

誰があんたに礼を言うか。

「話は別だが、これで俺があんたを二回助けたことになるな」

美月は彼を見つめた。

「つまり……」

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